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患者の強みを意識してますか?

いままでの医療では、医療者側が患者のもつ問題点に焦点を当てて問題解決を目指す考え方「問題解決モデル」が重要視されてきていました。

しかし、医療技術の進歩により、平均寿命の延長、慢性疾患患者の疾病の罹患増加など、病気と付き合い生活していかなければならない期間が長期化してきています。そのため、近年では患者の視点に立って患者の問題を解決しようとする「問題思考型システム」が広く認識されつつあります。患者さんの意思や意欲を取り入れたケアプランを作成していくことで、医療を提供するうえで重要になってくるのです。そのため、医療分野において患者の強みストレングスモデル」の考え方が現在重要視されています。

そこで今回は、患者の強みを活かした看護=「ストレングスモデル」について説明していきます。

ストレングスモデルとは


ストレングスモデルは、患者さんの夢や希望を実現させるために、患者さんが持つ強み(=ストレングス)を生かした生活を支援していく考え方のことを指します。

病気や障害による「できないこと」に焦点を当てるのではなく、患者さんの長所や強みにアプローチして「できること」を大切にする支援を指します。
自身も精神障害を持つ研究者、チャールズ・A・ラップによって提唱されました。

患者さん自身の思いを語ってもらい、支援する側と共有することが必要であるため、双方の間に信頼関係を築くことが重視されます。

ストレングスには4つの種類がある

すべての人には必ず何らかの強み=「ストレングス」があります。
その「ストレングス」には4つの種類があると言われています。
(1)性格
(2)才能や技能
(3)望みをかなえるために役立つ環境
(4)頑張る動機になるような関心や願望です。

個人の性質・性格

患者さんがどのような人かを表す、人柄や個性といったもの
例:「人なつっこい」「努力家」「ムードメーカー」など

才能・技能

患者さんが持つ才能や技能。他にも経験や、その経験からくる自負などもストレングスとして数えられる
例:「ギターを弾ける」「短歌を詠める」など

関心・願望

ストレングスモデルにおいては最も重要視されるストレングス
患者さんが関心を示すもの、強く望んでいるものを指す
例:「旅行に行きたい」「陶芸を教えたい」「小説家になりたい」など

環境

患者さんを取り巻く外的要因も、ストレングスとして挙げることができます。
年金をもらっているなどの制度的環境、親戚や知人などの人間関係、住んでいる場所や地域に何があるかといった住環境……環境のストレングスは多岐にわたる
例:「お金には困っていない」「近所に息子夫婦が住んでいる」「持ち家がある」など

性格技能/才能環境面の
ストレングス
関心/願望
・正直
・思いやりがある
・希望を持っている
・勤勉

・親切
・我慢強い
・繊細
・話好き
・気さく
・世話好き
・計算に強くお金の支出を管理できる
・車関係の仕事
・花をいける
・コンピューターの達人
・イギリスのロックミュージシャンに関する知識が豊富
・記憶力がよい
・安全な住居がありとても気に入っている
・兄
・犬のモモちゃんは大親友
・2年前地域の振興グループに参加していた
・両親
・釣りが大好き
・アイドルになりたい
・テレビで古い映画を見るのが好き
・喫茶店に行って時間を過ごすのが好き
・近い将来、車の免許を取りたい
(出典:伊藤順一郎 演習『ストレングスモデルのケースマネジメント』)

ストレングスモデルの6原則


チャールズ・A・ラップが定義した、ストレングスモデルの6原則があります。

  • 1. 精神障害者は回復し、生活を改善して質を高めることができる
  • 2.焦点は病理でなく個人の強みである
  • 3.地域は資源のオアシスとして捉える
  • 4.クライエントは支援プロセスの監督者である
  • 5.支援者と患者の関係が根本であり本質である
  • 6.支援者の仕事の場所は地域である

ストレングス・アセスメント

ストレングス・アセスメントを行う目的は、患者さんの情報をしっかり収集することにあります。
その基礎の上に、信頼関係と支援体制を築き上げていくのです。

ストレングス・アセスメントのやり方

1.情報収集

患者さんにまつわる情報は、会話をしながら少しずつ集めていきましょう。
面接や調査を通したものではありません。
話の内容だけでなく、患者さんの様子や話しぶりなども意識してチェックできるとよいですね。

2.アセスメントの頻度

アセスメントの目的は、患者さんのストレングスを普段の生活環境の中で見つけ出すことです。
地域のさまざまな場所や場面で、継続的に行っていきましょう。

アセスメントの際のポイント


ストレングス・アセスメントを行う際には、支援する側として以下のポイントを押さえておきましょう。

  • ・患者さんの置かれている状況の観点から情報を収集する
  • ・「今」にスポットを当てつつも、「将来」「過去」についても話し合いをする
  • ・患者さんが何を望むか、患者さん自身に決めてもらう
  • ・アセスメント中は励ましやアドバイス、承認を欠かさない
  • ・常に患者さんから教わる・尋ねる姿勢を忘れない

現在、臨床現場で働いている看護師の多くは、「問題解決思考」の教育を受けてきていることをふまえると、看護師には「問題解決型」が基本にあり、患者のストレングスに焦点を当てることは容易ではありません。そのため、まずは看護師が患者のストレングスに気づくことが重要です。

「気づく」ということは、今まで目を向けていなかったことに目を向けることであり、「気持ちを向ける」ための活動ともいえます。看護師が患者のストレングスに気づくことで、無理強いや空振りではないケアとなり、その人らしさ、その人の意志を支えることにつながるのです。(萱間,2016)

カンファレンスや他職種のかかわりなどを通して患者の情報を共有し,多面的に捉えること,自らの看護を振り返ることや患者と時間を共有し,患者の思いや希望を知ることで,患者のストレングスに気づくことができるでしょう。

まとめ


これからの医療は問題解決モデルだけではなく、患者さんのできることに着目した「ストレングスモデル」は今後ますます重要になってきます。
それは患者さん一人一人の生活の質、QOLを求めることに繋がっていきます。
疾患を持つ患者さんの自立支援のために、ぜひこの記事を参考にして、支援者として患者の強みを活かしたケアを提供できるようにしていきましょう。

参考記事
強みを生かして回復するということ – 認定NPO法人 リカバリーサポートセンターACTIPS
ストレングスモデルとは?~精神障害者を支える考え方~ | リハビリのお仕事Magazine (rehabili-shigoto.com)

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