その他 役に立つ知識 看護に関する知識 看護師

自己効力感とは?自信をつけることで疲労感が軽減?!

自己効力感という言葉をご存じですか?

なかなか意識していないと自己効力感という言葉を用いることは少ないと思います。しかし、自己効力感を高めることで得られるメリットは多くあり、昔から様々な研究で報告されています。
しかし、世界において日本はこの自己効力感が低いとされています。自己効力感が低いことで起こるデメリットも同様に報告されています。
そこで今回は「自己効力感」とはなにか、自己効力感が与える影響、それを高める方法について説明していきたいと思います。

自己効力感とは?

自己効力感(セルフエフィカシーself-efficacy)は、1977年にカナダ人心理学者のアルバート・バンデューラ(Albert Bandura)によって提唱されました。
自己効力感とは 何らかの課題に直面した際や特定の状況において、「自分ならこれくらいできるのではないか」といった可能性を認知することです。

自己効力感を向上させる要素は大きく分けて以下に示す4つがあると言われています。

■直接的達成経験(成功体験)

自分で何かを達成したり、成功したりした体験を通し、「できていること」「やれていること」を認識します。そのことによって、次に高い目標が出てきても過去の成功体験によって「自分ならやり遂げられる」という自信につながり、結果自己効力感が向上します。これを「直接的達成経験」といいます。

■代理経験

直接、自分が行動しなくても他者の経験を見聞きするだけで自己効力感は高まります。
これを「代理経験(モデリング)」と言います。
代理経験は、他者が何かの行為の結果として報酬を受け取ったと観察すると「自分でもできそうだ」という感覚を持ち、自己効力感が高まります。
反対に他者のある行為が失敗に終わったことを観察すると、自己効力感が低下してしまいます。

■言語的説得

自分の能力やスキルが優れている点を他者から指摘され、「あなたならできる」と説得されると自己効力感が高まります。これが「言語的説得」です。例えば小さな子どもが、教師や親に「走るのが速いね」「歌が上手だね」と何度も褒められると、子どもはその事柄を前向きに取り組みます。結果、より技術やセンスが向上して自信がつき、自己効力感が高まります。

■情緒的喚起

情動的喚起とは、身体の中で生じた生理的、感情的な変化状態を意識することで、自己効力感に影響を与えることです。
例えばプレゼンテーションをするときに失敗してしまった場合、まわりから笑われたと思い手に汗を握り、緊張感が増します。この経験により、プレゼンテーションに関しての自己効力感は低下します。逆にリラックスできる状態に持っていけば、自己効力感は高まります。

看護現場における自己効力感の考え方

自己効力感の概念は、看護現場でも最近、昔から重要視されています。
患者の自己効力感の高さによって、回復の度合いが向上した事例が数多く報告されているからです。

アメリカの看護師、ドロセア・オレムによって開発された看護理論でも、セルフケア不足の患者には自己効力感を高める看護を取り入れるのが重要だとされています。
たとえばリハビリで日常生活動作(ADL)が拡大している患者でも、看護師にケアしてもらうことが当然であると思い、セルフケアを行わないケースがあります。そこで看護師らは、患者に小さな成功体験を多く積ませて「自分でもできた」と実感させて、自己効力感を高める取り組みを行っています。
一方、看護する側も「自分なら患者と信頼関係が築ける」「よりよいケアが提供できる」と自己効力感を高めつつ、患者と向き合う姿勢が求められています。

自己効力感が高い人のメリット

それでは自己効力感が高い人にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

自己効力感が高いと、新しい物事に取りかかりやすく、課題解決に向かって積極的になると言われています。 そのため、結果を残しやすく、自信がつき、自然体で人とのコミュニケーションを取ることができたり、何事も諦めずに取り組むことができるといった傾向になります。
また、仕事やスポーツにおいても、パフォーマンスが高くなると言われています。さらに、ある研究では、自己効力感を高めることで、喫煙や肥満をコントロールすることができると報告されているのです。

自己効力感が低いことで起こるデメリット

自己肯定感がないことのデメリットとして、チャンスが来ても「きっとうまくいかない」「うまくいっても長く続かない」「仮に長く続いたとしても、そこには必ず裏がある」と、うまくいかないネガティブな発想や、できない理由、やらない言い訳が自然と浮かび始めやすくなる傾向にあります。

自己効力感を高める方法

それでは、自己効力感を向上させるための具体的な方法について見てきましょう。

■小さな成功体験を積み重ねる

自己効力感を高めるには、直接的達成経験をするのが最も効果的です。
そこで実現可能な成功体験を多く積み重ねて、「自分でもできる」という実感を持ちましょう。

ポイントは、「ハードルが低い短期目標をたくさん積むこと」です。

例えば「本を1冊読み切る」「3日に一度、休肝日をもうける」など日常生活で行える直接的達成経験はもとより、「今日は本を30ページ読む」「明日の休日のスケジュールを立てる」など、小さな目標を立てて、達成していきましょう。

■過去に成功した経験をリストアップする

直接的達成経験をしたことを掘り起こすのも、自己効力感を高めるのに有効です。
まずは過去の成功体験をリストアップしてみましょう。些細なことでも構いません。「自分でもできた」「できなかったのにできるようなった」ことを思い出してみましょう。
繰り返し成功体験を積み重ねてきたという実感が持てれば、おのずと自己効力感が高まるでしょう。

■成功をイメージしてポジティブな気分になる

自己効力感を生み出す情報源の一つ「生理的・情動的喚起」において、気分がいいときに自己効力感が高まり、逆に気分が落ち込んでいるときに下がることがわかっています。そのため、過去の成功体験がどうしても見当たらないときは、成功をイメージして自分を鼓舞しましょう。

脳は基本的に、現実と想像を区別できないと言われています。つまり、成功イメージを鮮明に思い描けば、「直接的達成経験」と同じような効果が得られるため、自己効力感のアップにつながるのです。
アスリートも重要な試合の前に、成功している自分を具体的にイメージして試合に挑みます。これをバンデューラ氏は「想像的体験」と定義しています。思い込みでも十分、自己効力感は高まるのです。

■失敗の捉え方を変える

自己効力感が強い人は、失敗を恐れずに何事にも挑戦します。一方、自己効力感が低い人は「どうせ失敗する」「自分がやっても失敗ばかりだ」と常に失敗を恐れて、チャレンジ意欲が弱まります。
フォード・モーターの創設者、ヘンリー・フォードは「失敗とは、より賢く再挑戦するためのよい機会である」という名言を残しています。
失敗を次に活かして「自分でもできた」と克服すれば、確実に自己効力感が形成されるでしょう。

■自己効力感が強い身近な人を観察・模倣する

自己効力感が強い人を観察・模倣するだけで、自己効力感がアップします。この代理経験による対象者は幅広く、有名人や著名人でも問題ありません。
しかし確実に自己効力感を高めたいなら、身近にいて信頼や尊敬できる人をロールモデルにしましょう。加えて、自分と類似性が高い人を対象にした方がより効果的です。類似性が低いと、影響を受けにくく自己効力感が高まりません。代理経験においては「あの人ができたなら、自分もできる」という実感が大切なのです。

■応援してもらえる環境に身を置く

自分で自己効力感が高められない場合、仲のいい同僚や友人たちなど周囲の人に応援してもらうのも一案です。他者から褒められたり、励まされたりすれば自己効力感が高まります。
一つ注意したいのが、言語的説得による自己効力感の形成は効果が長く続かないという点です。
定着させるためには、今までの成功体験やこれから取り組みたいことなどをレポートにまとめるなど、モチベーションが続くよう目に見える形で残しておきましょう。

自己効力感の測定方法

それでは、自分の自己効力感がどの程度か分かるために、自己効力感を数値として算出できる「一般性セルフ・エフィカシー尺度」という質問票をご紹介しましょう。
「一般性セルフ・エフィカシー尺度」は、北海道医療大学教授・坂野雄二氏らの論文「一般性セルフ・エフィカシー尺度作成の試み」として、1986年に発表されました。16の質問事項にYES/NOで答える16点満点のテストで、点数が高いほど自己効力感も高いということになります。

一般性セルフエフィカシー尺度の質問表。質問項目は以下の通りです。

  1. 何か仕事をするときは、自信をもってやる方である             
    「はい」1点/「いいえ」0点
  2. 過去に犯した失敗や嫌な経験を思い出して、暗い気持ちになることがよくある 
    「はい」0点/「いいえ」1点
  3. 友人より優れた能力がある                        
    「はい」1点/「いいえ」0点
  4. 仕事を終えた後、失敗したと感じることの方が多い             
    「はい」0点/「いいえ」1点
  5. 人と比べて心配性な方である                       
    「はい」0点/「いいえ」1点
  6. 何かを決めるとき、迷わずに決定する方である               
    「はい」1点/「いいえ」0点
  7. 何かをするとき、うまくゆかないのではないかと不安になることが多い    
    「はい」0点/「いいえ」1点
  8. 引っ込み思案な方だと思う                        
    「はい」0点/「いいえ」1点
  9. 人より記憶力がよい方である                       
    「はい」1点/「いいえ」0点
  10. 結果の見通しがつかない仕事でも、積極的に取り組んでゆく方だと思う    
    「はい」1点/「いいえ」0点
  11. どうやったらよいか決心がつかずに仕事にとりかかれないことがよくある   
    「はい」0点/「いいえ」1点
  12. 友人よりも特に優れた知識をもっている方である              
    「はい」1点/「いいえ」0点
  13. どんなことでも積極的にこなす方である                  
    「はい」1点/「いいえ」0点
  14. 小さな失敗でも人よりずっと気にする方である               
    「はい」0点/「いいえ」1点
  15. 積極的に活動するのは、苦手な方である                  
    「はい」0点/「いいえ」1点
  16. 世の中に貢献できる力があると思う                    
    「はい」1点/「いいえ」0点

結果は何点になりましたか?
論文によると、278名の被験者に「一般性セルフ・エフィカシー尺度」を適用したところ、平均点は6.580点、標準偏差は3.369点だったのだそうです。
この平均点以上であれば自己効力感は高いと言えるのではないでしょうか?
逆に点数が低かった場合は先ほど説明した自己効力感を上げる取り組みを行ってみてはいかがでしょうか?

まとめ

自己効力感がもたらす効果は現在も注目され続けています。あなた自身が自己効力感を向上させていくことももちろんですが、他者への自己効力感の向上を促す関りも、現在社会において同様に求められるスキルだと思います。
 この記事を参考に少しでも自己効力感について意識し、あなたが関わっている方に対して、自己効力感を上げる参考になれば嬉しいです。

参考記事
自己効力感(セルフ・エフィカシー)とは?自己肯定感との違いと尺度 (achievement-hrs.co.jp)
自己効力感を測定する質問紙GSES 一般性セルフ・エフィカシー尺度 (kokoronet.ne.jp)
自己効力感とは|自分を信じる4つの構成要素と3つのタイプ – Web活用術。 (swingroot.com)
自己効力感とは?看護現場でも注目される、目標達成に欠かせない自己効力感の重要性を解説 | あしたの人事オンライン (ashita-team.com)

コメント

タイトルとURLをコピーしました