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フレイルを意識して、健康寿命を延ばそう!

皆さんは日本人の平均寿命はどれくらいか知っていますか?

2019年の日本人の平均寿命は女性が87・45歳、男性が81・41歳であることが厚生労働省より公表されました。それに対し、直近(2016年)の健康寿命としては、女性が74・79年、男性が72・14年であることが公表されています。つまり、女性では約12年、男性では約9年、誰かの手助けが必要な状態(医療提供、要介護状態)であると言えます。

そのため、国は健康寿命を延ばすために様々な取り組みを行っています。その中で出てくる言葉に、「フレイル」というものがあります。これを意識することで、将来の健康寿命に大きく影響すると言われており、今注目されているのです。

そこで今回は、「フレイル」について詳しく説明していきたいと思います。

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フレイルとは?

海外の老年医学の分野で使用されている英語の「Frailty(フレイルティ)」が語源となっています。日本語に訳すと「老衰」、「脆弱」などを意味します。日本老年医学会は高齢者において起こりやすい「Frailty」に対し、正しく介入すれば戻るという意味があることを強調したかったため、「フレイル」と共通した日本語訳にすることを2014年5月に提唱しました。

また、厚生労働省研究班の報告書では「フレイル」を

「加齢とともに心身の活力(運動機能や認知機能等)が低下し、複数の慢性疾患の併存などの影響もあり、生活機能が障害され、心身の脆弱性が出現した状態であるが、一方で適切な介入・支援により、生活機能の維持向上が可能な状態像」

厚生労働省研究班の報告書による

と表現しています。分かりやすく説明すると「加齢により心身が老い衰えた状態」のことであり、健康な状態と日常生活でサポートが必要な介護状態の中間を意味します。

脳疾患などの疾病や転倒などの事故により、健常な状態から突然、要介護状態に移行することもありますが、多くの場合、健康な状態からフレイルの段階をへて要介護状態に陥ると考えられます。

例えば「外出の機会が減った」「美味しいものが食べられなくなった」「活動的ではなくなった」と言う人はフレイルの危険信号が灯っていると考えられるのです。

フレイルとなる原因は?

フレイルは、明確な固有の原因があって引き起こされるというよりも、加齢に伴う様々な変化が重なりあうことにより起こると言われています。

そのため、身体的問題のみならず、認知機能障害やうつなどの精神・心理的問題、独居や経済的困窮などの社会的問題も原因の一つとして挙がります。

これらの原因を放置していると、より虚弱な状態に陥らせ、フレイルから要介護状態へと移行するのです。

フレイルの原因となる具体的例

●動くことが少なくなる
●社会的に交流する機会が減る
●身体機能の低下(歩くスピードの低下)
●筋力が低下する・筋肉量が減る(サルコペニア)
●日常管理が必要な慢性疾患(糖尿病、呼吸器疾患、循環器疾患、関節炎、抑うつ症状など)

※慢性疾患がフレイルの原因となる例
 ・糖尿病による知覚低下や痩せ
 ・呼吸器疾患による咳や呼吸困難
 ・循環器疾患による活動の制限 など

●体重が減る
●低栄養になる
●収入が減る
●孤独になる

このように原因は様々なことが挙げられます。では、フレイル状態に至るとどのようなことが起きるのでしょうか?

フレイル状態に至るとどうなるか

 フレイルの状態になると、死亡率の上昇や身体能力の低下が起きます。また、何らかの病気にかかりやすくなったり、入院するなど、ストレスに弱い状態になってきます。

例えば健常な人が風邪をひいても、体の怠さや発熱を自覚するものの数日すれば治ります。しかし、フレイルの状態になっていると風邪をこじらせて肺炎を発症したり、怠さのために転倒して打撲や骨折をする可能性があります。また、入院すると環境の変化に対応できずに、一時的にせん妄を発症したり、自身の感情をコントロールできなくなることもあります。転倒による打撲や骨折、病気による入院をきっかけにフレイルから寝たきりになってしまう可能性もあります。

このように、生活の質を落とすだけでなく、さまざまな合併症も引き起こす危険があると言えるのです。

フレイルの基準

 フレイルの基準には、さまざまなものがありますがFried(フリード)が提唱したものが採用されていることが多いです。Friedの基準には5項目あり、3項目以上該当すると「フレイル」、1または2項目だけの場合にはフレイルの前段階である「プレフレイル」と判断します。

体重減少     :意図しない年間4.5kgまたは5%以上の体重減少
疲れやすい    :何をするのも面倒だと週に3-4日以上感じる
歩行速度の低下  :通常歩行速度<1.0m/秒
握力の低下    :握力     男性<26kg、女性<18kg
身体活動量の低下 :(1)軽い運動・体操をしていますか?
  (2)定期的な運動・スポーツをしていますか?
          上記の2つのいずれも「していない」と回答

その他のフレイルのチェック方法

その他にも簡易的にフレイルチェックを行うことができる測定方法をご紹介しましょう

「指輪っかテスト」

自分のふくらはぎに輪っかを作って測る測定器を使わずに簡単に筋肉量を計ることができます。

「イレブンチェック」

 11項目の質問に答えるフレイル予防に大切な栄養・運動・社会参加に関する自身の食習慣や日常生活を調べます。

「咬筋触診」

指先で咬む筋肉の強さをチェックし、口の健康度を測ります。

「パタカチェック」

測定器を使って「パ」もしくは「カ」を発音するお口や舌の筋肉の状態を調べます。

「片足立ち上がりチェック」

椅子から片足で立ち上がる足腰の筋力とバランスを調べます。

その他にも、ふくらはぎの太さを測る「ふくらはぎ周囲長の計測」握力計を使う「握力チェック」や機械を使って手足の筋肉量を測る方法でのチェックを行います。

質問票による健康チェック

このような様々な測定の結果をチェックシートにシールを貼ってひとりひとりが自己採点をします その結果、今後の生活でどんなことに気をつけたらいいのかご自身で気づくことができ、またサポーターからアドバイスを受けることができます。

身体的フレイルのチェック

フレイル・基本チェックリスト

No         質問事項              回答:何れかに〇をお付けください

1            バスや電車で1人で外出していますか                  0.はい    1.いいえ

2            日用品の買い物をしていますか                  0.はい    1.いいえ

3            預貯金の出し入れをしていますか               0.はい    1.いいえ

4            友人の家を訪ねていますか                         0.はい    1.いいえ

5            家族や友人の相談にのっていますか                     0.はい    1.いいえ

6            階段を手すりや壁をつたわらずに昇っていますか          0.はい    1.いいえ

7            椅子に座った状態から何もつかまらずに立ち上がってますか   0.はい    1.いいえ

8            15分間位続けて歩いていますか                 0.はい    1.いいえ

9            この1年間に転んだことがありますか                  1.はい    0.いいえ

10          転倒に対する不安は大きいですか               1.はい    0.いいえ

11          6ヶ月間で2~3kg以上の体重減少はありましたか      1.はい    0.いいえ

12          身長(cm)・体重(kg)・(BMI=)(注)

13          半年前に比べて堅いものが食べにくくなりましたか       1.はい    0.いいえ

14          お茶や汁物等でむせることがありますか              1.はい    0.いいえ

15          口の渇きが気になりますか                         1.はい    0.いいえ

16          週に1回以上は外出していますか               0.はい    1.いいえ

17          昨年と比べて外出の回数が減っていますか           1.はい    0.いいえ

18          周りの人から「いつも同じ事を聞く」などの物忘れがあると言われますか
              1.はい    0.いいえ

19          自分で電話番号を調べて、電話をかけることをしていますか   0.はい    1.いいえ

20          今日が何月何日かわからない時がありますか                 1.はい    0.いいえ

21          (ここ2週間)毎日の生活に充実感がない           1.はい    0.いいえ

22          (ここ2週間)これまで楽しんでやれていたことが楽しめなくなった
   1.はい              0.いいえ

23          (ここ2週間)以前は楽にできていたことが今ではおっくうに感じられる
              1.はい    0.いいえ

24          (ここ2週間)自分が役に立つ人間だと思えない          1.はい    0.いいえ

25          (ここ2週間)わけもなく疲れたような感じがする       1.はい    0.いいえ

(注)BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)が18.5未満の場合に該当とする

当てはまった回答のうち、1の点数を数え、以下の表と照らし合わせてみましょう。

項番       チェックの目的   フレイルの可能性がある点数

1~20    日常生活全般      10点以上

6~10    運動器の機能      3点以上

11~12  栄養状態              11が「はい」で、12のBMIが18.5未満の人

13~15  口腔機能              2点以上

16~17  社会的交流          16が「いいえ」の人(17も「はい」の人は要注意)

18~20  認知機能              1点以上

21~25  心理(抑うつ)状態          2点以上

(厚生労働省平成21年3月「介護予防のための生活機能評価に関するマニュアル(改訂版)」を元に作成)

フレイルを予防するために必要な要素とは?

「健康→フレイル→要介護状態」という状態にならないためには、中間の段階であるフレイルになることを防ぐこと、あるいはその状態を改善することが大切です。それでは、フレイルを予防するために、どのような対策が必要なのでしょうか。

食事の栄養バランスを見直す

フレイル予防においては、栄養バランスのとれた食事が大切です。

ポイントは、筋肉の元となるたんぱく質をどれだけ摂取できるか、ということです。筋肉量を維持するために、高齢者は若い世代以上にたんぱく質を摂取し、筋肉の構成を促進するアミノ酸の血中濃度を上げなければなりません。

フレイル予防の観点からすると、性別に関係なく、体重1kgあたり1gのたんぱく質を日々の食事で摂取するのが望ましいと言われています。

食事バランスガイドは1日に何をどれだけ食べるとバランスが良いのかを図りやすく駒の形で示しています。食事のバランスを意識し色々な種類の食べ物をバランスよく食べるように心がけてください。

よく噛んでしっかり食べましょう

昔は簡単に噛んで食べられたものが今は少し食べるのが難しくなってきていませんか?

食べ物を噛む力や飲み込む力は年をとるにつれて低下していき、柔らかいものばかり食べているとかのために必要な筋肉が徐々に衰えさらに噛む力が低下するといった悪循環に陥ってしまいます。歯ごたえのあるものを噛もうとして あの能力を低下させないように心がけましょう。

むせ込みに気をつけましょう

お茶や汁物でむせることはありませんか? むせが気になる方は飲み込むための筋力が低下している可能性があります。気になるときは唾液腺マッサージをすると唾液がたくさん出るようになり飲み込みやすくなります。また、口の体操も有効です。「パ・タ・カ・ラ」という言葉などを発音するパタカラ体操やお好みのフレーズの早口言葉を試してみてはいかがでしょうか。

適度な運動をする

フレイル予防のためには、有酸素運動も有効とされています。

高齢者の場合はウォーキングが最も取り組みやすくオススメです。最低でも1日5,000歩以上歩くようにすると、筋力の低下を防げると言われています。たとえ高齢者であっても、運動療法を適切に行えば筋力を維持することができます。

運動といっても体を激しく動かすものばかりではありません。ベッドの上で足を動かす運動や、椅子を使って座る・立つを繰り返すことも、筋力の向上につながります。

ただし、筋力が低下している状態で無理に体を動かそうとすると転倒や骨折を起こす危険があるので、本人はもちろん家族も注意が必要です。専門の医師から具体的な運動方法を教えてもらい、取り組めるとベストです。

持病のコントロールを

既に糖尿病、心臓病、腎臓病、呼吸器疾患、整形外科的疾患などの慢性疾患がある場合には、まず持病のコントロールをして、悪化させないことが大切です。

持病の治療がうまくいかず、行動が制限されたりさまざまな症状が現れると、体を動かしたがらなくなったり、身体機能が低下してしまうこともあります。負担が少ない持病の症状コントロール方法を教えてもらうなど、医師や薬剤師とうまく連携して、現在の状態を維持・継続しましょう。

まずは持病の治療に向き合い、安全に運動ができるという医師の許可を得たうえで、フレイル対策に取り組みましょう。

感染症の予防

高齢者は免疫力が低下していることが多く、インフルエンザや肺炎にかかりやすいといわれています。インフルエンザや肺炎が重症化して入院すると、免疫力の高いときなら問題にならない体内の常在菌による感染症にかかるなどして、そのまま寝たきりになってしまうこともあります。本人と家族は感染症に対して細心の注意を払う必要があるでしょう。

以下のような方法で、感染症を予防しましょう。

・適度な運動やバランスのよい食事などにより免疫力を高める体作りをしておく
・基本的な手洗い・うがいなどの清潔保持を行う
・インフルエンザワクチンなどを接種する
・誤嚥性肺炎による肺炎を防ぐため、しっかりと口腔ケアをする

社会とのつながりをもつ

栄養や運動に気をつけて生活していても社会とのつながりを持たないと心身の様々な側面がドミノ倒しのように弱っていく傾向にあります。そのため、フレイルを予防するためには、社会的な孤立や意欲低下を防ぐことも重要となってくるのです。

高齢になると、社会的地位や家族の役割が変化したり、家族や友人を喪失することで、気力や活気が失われてしまうこともあります。外出する機会や気力が失われ、家に閉じこもりがちになると、身体的フレイルへと進行することも少なくありません。

趣味のサークルなどで新たなつながりを作ったり、地域のボランティアなどで貢献する役割を担うことで、人との関わりを保ち続けることは、身体的、精神心理的フレイルの進行予防になります。

介護予防の観点では、高齢者ご本人や、身近にいるご家族がフレイルという状態を知り、介護状態へと移行しやすい危険性をはらんでいることや、どのような状態がフレイルにあたるのかを知っておくこと、フレイルを進行させないための日常的な配慮を行っておくことは有用です。

また、介護予防教室などの地域の集まり、趣味の会などに積極的に参加し、精神を健康に保って活動量を上げることがフレイル対策においては大切なのです。

まとめ

フレイルを予防するためには、運動と栄養、そして社会参加が大切です。しかし、これまで運動習慣を持っていない人が運動を継続するのは大変なことです。

そこでポイントになるのが、人との関係性です。

友人とカラオケに行く、買い物に行く、ボランティアに参加するなどして、日々の活動量を上げるように心がけましょう。社会参加を取り入れて、無理なく、楽しく体を動かしていくことがフレイル予防につながります。

また、心身が弱ってきた兆候が見られたら、早めに主治医などに相談することが大切です。フレイルの前段階であるプレフレイルの状態から対策を始めることで、深刻なフレイルに陥りにくくなるので、高齢者本人はもちろん、家族や友人も日頃から気にかけるようにしていきましょう。

参考文献
フレイルに関する日本老年医学会からのステートメント 一般社団法人日本老年医学会
厚生労働科学研究費補助金(長寿科学総合研究事業) 総括研究報告書 後期高齢者の保健事業のあり方に関する研究 研究代表者 鈴木隆雄

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