
人員配置基準とは?
適正な医療・介護を行うためには一定の数以上の人員を確保する必要があります。そのため、病院や介護施設などでは入院患者数や入所定員数に対して、医師・看護職員・介護職員などの人数が決められています。この基準を「人員配置基準」と言います。
たとえば、
病院の一般病棟では「患者:医師=16:1」、「患者:看護師(または准看護師)=3:1」
これは、患者16名に対して医師が1名必要・患者3名に対して看護師(または准看護師)が1名必要という意味です。
厚生労働省は、「人員配置標準を満たさない場合であっても、患者の傷病の程度、医療従事者間の連携等により、望ましい一定の医療水準を確保することが十分可能な場合もある」としています。
人員配置基準はあくまでも「標準」であり、「最低基準」ではないということです。
配置基準を下回っていても、医療サービスが十分であれば、必ずしも指導の対象とはならないようです。一方で、必要な人員確保がされていないと判断された病院や施設には、改善指導が入るようです。
看護師の人員配置基準の歴史
現在の病院では医師や看護師による「完全看護」が主流ですが、1950年代までは家族や付き添いの人による看護が日常的に行われていました。そんな中、1958年に「基準看護制度」が設立され、病院での完全看護が看護師の業務となりました。この「基準看護制度」で4対1の看護基準が設けられたほか、その後の診療報酬の評価制度開始から3対1、2対1といった他の方式も作られていきました。
現在の配置基準は、1994年創設の「新看護体系」がもとになっているそうです。実際に現場で働く看護師の数で労働力を換算する「実質配置」が取り入れられていったのです。
看護師の常勤換算について
労働力を実際の人数で数えるのではなく、勤務時間で数えるのが常勤換算です。
正社員とパートでは労働時間が異なるため、同じ1人の労働力として計算することはできません。
様々な働き方がある中で労働力を数値化するために「常勤換算」という考え方があります。
患者3名に対して看護師(または准看護師)が1名必要な一般病棟を例にします。
常勤は週5日8時間勤務で週40時間の勤務と定められており、入院患者数30名なら常勤の看護師(または准看護師)は10名必要となります。これが常勤換算での10名ということです。
一方で、週4日5時間勤務で週20時間勤務の人を常勤換算で考えると、20÷40で0.5名。つまり、この勤務形態の人は2名で常勤1名として換算できます。常勤が8名でも、週4日5時間勤務の人が4名いれば常勤換算の10名になるので人員配置基準を満たしているということになります。
このようにさまざまな働き方の人がいたとしても、常勤の勤務時間で換算すると何名分になるのか、という考え方が常勤換算なのです。
7対1看護とは?
7対1看護の7対1とは、看護師1名が入院患者7名を受け持つということです。
この比率は、1日を平均したもので構わないということになっています。
7対1看護体制が始まった背景
この「7対1看護体制」は、諸外国と比べて低レベルであった日本の看護職員の配置基準の見直しを行なうためにスタートしたものです。2006年(平成18)には診療報酬も改訂され、入院基本料区分に「7対1看護体制」が加えられました。
7対1のメリット
患者にとって手厚い看護を受けられるという7対1看護ですが、働く側からみてもメリットがあります。
- 看護師1名の担当患者数が少ないため負担が減る
- 勤務している看護師が多いため勤務面での労働環境がよい
- 診療報酬が高くなるため病院の経営状況が安定し、給与面に表れることも
7対1のデメリット
- 人員を増やす必要があり、看護師不足となる可能性がある
- 病院の人件費の高騰
- 資金力のある大手病院に看護師が集まり、地方の中小規模の病院や過疎地域の小規模病院に影響が出る
10対1の特徴
7対1体制と同様、急性期の患者を対応していますが、患者の医療・看護必要度は7対1よりも低いことが特徴です。入退院の頻度も7対1より少ない傾向にあるため、忙しさの視点でも比較的落ち着いている場合が多いようです。7対1ほどの忙しさでは働けないものの、充実した医療環境で看護師業務を頑張りつつ、家庭や自分の時間も大切にしたい方に向いているといえるでしょう。また、診療報酬は減ってしまいますが、人員削減による人件費減少につなげることができます。
13対1の特徴
急性期対応はせず、看護必要度の低い患者のケアをする病院は13対1(または15対1)の看護基準をとっています。ケアミックス病院や回復期リハビリテーション病棟など、退院~復帰を目指す方のサポートを行う施設での勤務が多いようです。
まとめ
2年毎に行われる診療報酬の改定で2016年から看護基準7対1の認定基準が厳しくなりました。
国としては、今後ますます高齢社会が進む中で、慢性期での看護師の人数を確保するために7対1看護を10対1に移行し、慢性期病院を増やしたいという思惑があると思います。
患者にとっては手厚い看護を受けられ、看護師側にとっても業務負担が減ったり、給与が高くなる可能性がある7対1看護ですが、現在はそれでも何対何に関係なく看護師不足が言われています。ますます労働環境は過酷で、給料も十分に貰えられていない現状にあります。
2年毎の診療報酬改定でどのように私たちの業務が変化してくるのか、この記事をきっかけに関心を持って情報を集めていただければと思います。
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