
看護方式とは
入院患者への看護は、24時間体制が求められます。 しかし、看護師一人ですべてに対応するのは現実的に困難です。 そこで患者に対する看護を十分に行えるように、複数の看護師で看護を提供していく必要があります。
その際、「職場で効果的な看護を提供するために、看護師がどのような形態で活動すれば良いのか定めた方法論」のことを看護方式と言います。
看護方式は様々な種類、組み合わせがある
看護方式は様々な種類があり、どれも看護に精通した先人達の経験やノウハウをもとに考えられています。その中でどれを選択するかは全体の病床数や疾患の種類、治療の方法など様々な視点から判断して選択されます。
近年では1つの看護方式に縛られず、2つ以上の方式の良いところを組み合わせて、柔軟でより良い看護を行うといった看護方式を採用する病院も多く見受けられます。
医療技術の高度化や入院日数の短縮化など院内環境が流動的な昨今では、求められる看護サービスも日々変化していきますので、今後もより安全で画期的な看護方式が生み出されるかもしれません。
それでは、看護方式の種類について説明していきます。
看護方式の種類について
■チームナーシング
チームナーシングとは、1つの病棟に所属する看護師を2つ以上のチームに分け、そのチームで一定の患者さんを受け持つ看護方式です。
患者さんが入院してから退院するまでの看護ケアをチーム全体で保障します。
チームにはそれぞれチームリーダーがいます。経験年数、能力、専門分野などが異なるメンバーを取りまとめながら日々の看護業務を行っていきます。
看護過程の展開もカンファレンスなどを通してチーム単位で行うため、協同意欲がわきやすい看護方式といえるでしょう。ときには自分にはない視点に気づき、患者さんにも多角的に関わることができます。
また、経験の浅い看護師や転職・復職者でも、不安や負担が比較的少ない状況で日々の業務に当たれることも特徴として挙げられます。
もし、チームごとに提供する看護に差が生じている場合には、看護水準を一定に保つため、リーダーやメンバーの入れ替えを行うこともあります。
一方で、一定期間リーダーやメンバーを固定する「固定チームナーシング」という看護方式もあります。限られたチームメンバーで構成されるため、責任の所在が、より明らかになるそうです。
メリット
- 看護師個人の能力差があっても、チーム全体でフォローし合える
- 一定水準の看護を提供できる
- 新人看護師や中途採用の看護師など、経験の浅い看護師の配置ができる
- 患者に対して多角的に看られるため、自分一人では気が付かなかった患者のサイン・心理などに気が付きやすい
デメリット
- どんなリーダーが采配を取るかによって、チームの良し悪しが分かれる
- チームリーダーは高い能力と責任、統率力が求められるため、負担が大きい
- チーム内で常に情報共有する必要がある
- 小さな変化を見逃しやすい
- 患者視点…自分の担当者(看護師)が誰なのか分かりづらい
プライマリーナーシング
プライマリーナーシングとは、1人の看護師が1人の患者さんを入院から退院まで一貫して担当する看護方式です。
担当となる看護師(プライマリーナース)は、その患者さんの状態に合わせた看護計画を責任もって立案し、直接ケアを提供します。プライマリーナースが休みの場合は、他の看護師が代わりに担当。プライマリーナースが立てた看護計画に基づいてケアを実施します。
患者さんの状態は日々変化します。ですから、プライマリーナースは患者さんの状態を的確に把握することが重要です。これから起こりうることを予測しながら看護計画を立て、必要に応じて計画を見直していきます。入院から退院までの間、患者さんによりよい看護を提供できるかは、プライマリーナースの看護観、知識、技術に左右されるといってもよいでしょう。そのため、プライマリーナースの責任は大きいといえます。
経験が浅い新人看護師やプライマリーナーシングが未経験の転職・復職者であれば、最初は戸惑いを感じるかもしれません。けれども、大抵の職場では最初から独り立ちさせるということはありません。先輩看護師と一緒に患者さんを受けもったり、カンファレンスを通してこのような看護師のフォローを行ったりします。1人の患者さんのことを深く考えながら立てた看護計画によって、患者さんがより良い状態にいたる過程を体感したとき、看護師としてこれ以上ないやりがいを感じるでしょう。
メリット
- 1人の看護師が1人の患者を一貫して看護ができる
- 患者に対して、きめ細やかなケアができる
- 患者に対する責任が持てる(責任の所在が明確)
- 患者と信頼関係が築きやすい
- 看護能力向上に期待できる
- 仕事への充実感が得られる
デメリット
- 看護師の能力によって、提供する看護にばらつきがある(ケアに差が出やすい)相性が合わない患者さんの場合、精神的に苦痛
- 患者との関係が密になるため、人間関係に影響が出ることもある
- 一人当たりの担当する患者数が多くなる
- 看護師の責任が大きくなる
- 看護師間における負担の大きさに差が出やすい
- 看護師間のコミュニケーションが少なくなる(患者の情報を共有する機会が少なくなり、情報が伝わりにくくなる)
- 看護師の資質や能力などに関する問題が発生しやすくなる
- 他の看護方式と比べて人員を多く要する
モジュールナーシング
チームナーシングやプライマリーナーシングはアメリカで考えられた看護方式ですが、モジュールナーシングは日本独自で開発されたものです。アメリカの看護師の人数と比べて、日本の病院に配置されている看護師数が、圧倒的に少ないという背景から生まれたそうです。この看護方式はチームナーシングとプライマリーナーシングの利点をそれぞれ取り入れてつくられています。
モジュールナーシングでは、まずひとつの病棟に所属する看護師を2つ以上のチームに分割。そして、そのチームをさらに数名ずつのモジュール(単位)に分けます。そのモジュールで、一定数の患者さんの入院から退院までを一貫して受け持ちます。1つのモジュールが担当する患者さんの数は、チームナーシングよりも少なくなります。そのため、看護師は担当する患者さんに集中して関わることができ、看護師としてのやりがいを感じやすいといえます。また、モジュールが複数の看護師で構成されているので、プライマリーナーシングよりも1人の看護師にかかる負担や責任が分散されます。
メリット
- 看護師が患者を全体的に把握することができ、看護計画の立案・実施・評価がしやすい
- プライマリーナーシングと比べて、患者の受ける看護に偏りが少ない (リーダーが看護師の能力差をカバーできるから)
- チームナーシングと比べて、担当した患者の回復過程を一貫してみることがでいる (やりがいを感じやすい)
- 患者とモジュールを受ける看護師の関係が明らか、患者との信頼関係が築ける
- 看護師求められるもの…プライマリーナースとしての判断力・自立性、リーダーのサポートがあると、看護水準が保ちやすい
- 看護の質を一定に保つことができる
- 患者に合わせた看護計画を立てられる
- モジュールメンバーの中で協調し、看護師の成長に期待できる
デメリット
- 看護師の自立した能力が求められる
- 看護師数や患者数の増減に対して、その都度対応していかなければならない
- 他のモジュールが担当する患者の情報が入ってこない
- モジュール外の看護師と、コミュニケーションを取る機会が減る
機能別看護方式
複数の看護師が、業務ごとに係を決めてケアを行う看護方式です。
(「検温」「注射」「投薬」などの業務の内容別に割り当てられる)
看護師間のコミュニケーションが取りづらいため、この方式のみを採用する病院は少ないそうです。チームナーシングやプライマリーナーシングなどの看護方式と、併用されているところが多いです。
メリット
- 患者に対して一定の看護水準のケアを提供できる(看護水準の一定化が図れる)
- 少人数で効率的な看護ができる
デメリット
- 看護師間のコミュニケーションがあまり取れない
- 患者目線…看護師の入れ替わりが多く、自分の病状を誰に話していいのか分かりづらい(自分の担当の看護師が分からない)
PNS(パートナーシップ・ナーシングシステム)
PNSの最大の特徴は、二人以上の看護師で複数の患者さんを受け持つことです。
2人以上ですることで自己完結型での患者さんに対する不安の解消や、安心安全な看護の提供、患者さんのニーズに対応し易くなるといった目的で作られました。
PNSでは2名一組のパートナーが基本ですが、新人さんのOJT用にベテラン2名+新人1名の3人体制のPNSを組む医療施設もあります。
エルダーナース制度と似ていますが、エルダー制度では期間限定ですがPNSでは常に2名以上で組みますので新人さんは元より、ブランク明けの看護師にとっても安心できる看護方式です。
メリット
- パートナー同士でスキルの確認やスキルアップ
- 患者さんの情報確認の共有化、それによる看護の質向上
- 相談がしやすくなる
- 新人やブランク明け看護師のOJTの質向上
- 成果を共有できるのでモチベーションの維持ができる
- 超過勤務の軽減・患者として、看護師が2名なので安心感がある
- 患者として、投薬時などのリスク減少
デメリット
- 看護師の増員が必要になる。
- ベテラン看護師の負担が増える
- 人間関係の良し悪しに左右される
- 何らかの理由で退職されるとパートナーを再度組み直すのが大変
まとめ
改めて看護方式の種類について簡単におさらいです。
チームナーシング…チーム単位でケアを実践する。看護を一定レベルにする。
プライマリーナーシング…看護師と患者、マンツーマンで一貫した看護ができる。
モジュール看護体制…日本独自の看護方式。偏りのない看護を提供できる。
機能別看護方式…複数の看護師が、ケアの内容別に看護を行う。
上記のように看護方式には様々な種類があります。それは、各施設において、患者さんが安心・安全に看護を提供できる体制にするためにはどのようにしたら良いのか、様々な考案をされてきた結果です。これらあなたの施設ではどのような看護方式を提供しているのか改めて把握することで、あなたの施設の特徴をより意識でき、よりスタッフ間での連携を意識できるのではないでしょうか?
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